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#オリジナル小説 #SS 月が綺麗ですね

mugi


「月が綺麗ですね」

部活の帰り道、同じ方向という理由だけで一緒に帰っていた後輩が唐突に月を見上げて朗らかに笑った。夏目漱石がI love youを月が綺麗だと訳したのは有名な話だと思う。それにこのひとつ年下の後輩は時間さえあれば楽しげに本をめくっているのだ。これはもしかしたら遠まわしに俺に告白をしているのではなかろうか。そう思考をめぐらせた俺は緊張してきて手に変な汗が吹き出てきた。今まで女子に告白されたことのない俺にとって緊張するなというほうが無理な話だ。正直この後輩のことをそういう目で見たことはなかった。特別かわいいわけでもないけれど、人好きのする笑顔と明るい性格は好ましいと思う。俺を好きだというのなら付き合ってもいい。

「付き合っても良いよ」

だからそんな言葉を口にした。どんな顔をするのだろう、どきどきしながら隣を歩く後輩を見ると彼女はぽかんと口を開けて間抜けな顔をしていた。

「あたし先輩に付き合って欲しい場所なんてないですけど」

あれ…思っていた反応と大分違う。

「…普段本読んでいたよな?」

「あぁ!あれラノベです!面白いですよ。何?先輩興味あるんですか!?」

きらきらした目で見上げられてしまった。とんだ勘違いに羞恥で顔が赤くなる。

「あれ?どうしたんですか先輩?」

お前が俺に告白したのかと思ったなんてこと言えるわけがない。そんなことを知られて笑い話にでもされたら、死んでもいいよ。

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Posted bymugi

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